ダニ媒介性脳炎の基本情報
ダニ媒介性脳炎(tick-borne encephalitis)は、
ダニ媒介性脳炎ウイルスを保有するマダニに咬まれることによって感染する疾患です
ダニ媒介性脳炎(tick-borne encephalitis)ウイルスは、フラビウイルス科オルソフラビウイルス属に分類されるウイルスです。ヒトへの主な感染経路はマダニに咬まれることですが、ヤギの生乳を飲むことによっても感染することがあります。
ダニ媒介性脳炎ウイルスを保有するマダニがいる地域でのレクリエーション(魚釣り、キャンプ、山菜取りなど)や仕事(林業、農業など)で野外活動する場合、マダニに咬まれて感染するリスクがあります。
厚生労働省検疫所 FORTHホームページ「ダニ媒介性脳炎(Tickborne encephalitis)」
https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2010/0625_01.html(2024年7月閲覧)
どんな症状がでるの?
マダニによって媒介されたダニ媒介性脳炎ウイルスに感染すると、潜伏期を経て、さまざまな臨床症状が現れます。
日本で多い極東亜型のダニ媒介性脳炎ウイルスの感染では、頭痛や発熱、悪心・嘔吐などの症状が現れます。さらに悪化すると、精神錯乱、昏睡、痙攣、麻痺などの脳炎症状が出現することがあります。
国立感染症研究所:ダニ媒介性脳炎とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/434-tick-encephalitis-intro.html (2024/3/26参照)
後遺症は残るの?
リトアニアで行われた長期追跡調査では、ダニ媒介性脳炎ウイルス患者117例のうち、54例(46.2%)に記憶力低下、気分変調、集中力低下、運動失調症、麻痺などの後遺症が認められたことが報告されています。
このように、人によっては症状が治まらずに長引くことがあるため、長期的な管理が必要になる病気であると言えます。
(海外データ)1-3)
(記憶力・集中力低下、気分変調)
文献1)
目的:1年間入院した中枢神経系感染症患者のTBE罹患率を調査し、TBEの疫学的特徴及び臨床的特徴ならびに1年間の追跡期間中のTBEの長期罹患率を記述する。
方法:1998年6月~1999年5月にカウナス大学病院(リトアニア)の感染症クリニックに入院した患者250例(16歳以上)のうち、TBEと診断された133例について、登録時、7~10日目、12週目、および試験開始16ヵ月目に臨床検査を実施し、TBE発症から1年後に神経精神医学的質問票を用いて脳の器質的疾患の評価を行った。
1) Mickienė, A. et al.: Clin Infect Dis. 35(6): 650-8, 2002 より作成
2)Haglund, M. et al.: Vaccine. 21(Suppl 1): S11, 2003 より作成
3)Kaiser, R.:Infect Dis Clin North Am. 22(3):561, 2008より作成